われ、幻の魚を見たり
「十和田湖ひめます」物語
魚が棲まないと言われた十和田湖。
和井内貞行氏は、何度となく養魚に失敗した結果、多額の借金を抱え苦しい生活を送ります。
貞行45歳、最後の勝負にでました。
家具調度品を売り払って、青森県が支笏湖から購入した「カバチェッポ(ひめます)」の卵を譲り受け、稚魚を放流することにしました。
3年後の明治38年秋。
来る日も来る日も十和田湖を見つめていると、ある日無風にもかかわらず湖面がさざなみで揺れました。
ひめますが大挙して押し寄せてきたのです。
養魚を志して22年、貞行の血の滲むような努力が実った瞬間と伝えられます。